interview

「いわてんど」に学んで、松本土産をつくりたい。

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今回のまちの教室と連動したギャラリー展示「いわてんど with てくり」設営の前日、授業コーディネーターの菊地さんに今回の企画意図についてお聞きしました。

ー まず、企画意図を説明してもらえますか。

今回は「『いわてんど』に学ぶ風土の届け方」というタイトルにしてあるのですが、盛岡に「Holz(今回の講師、平山さんの経営するお店)」というセレクトショップとオリジナル家具屋が合わさったようなインテリアショップがあって、あと市内から少し離れたところにある奥さんが営んでいる「raum」という雑貨店と共同で「いわてんど」という屋号で出張ショップをやってる。てんどが手仕事みたいな意味だったかな。岩手のいいもの、おいしいものとか、県内外の人たちに知ってもらおうという取り組みで。香川のまちのシューレとか都内とかで(企画展を)やっていた。

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ー てんどの意味は手作業とか手際という意味ですね。

あ、そうそう手作業、手際。
栞日を開業する前に、ALPS BOOK CAMPを、当時はまだALPS BOOK CAMPという構想もアイディアもネーミングも全くないんだけれども、とにかくその自分で本屋を松本で始めたら、長野県でこれっていう本のイベントを開催しようということは、開業準備中から考えていたので、国内の本のイベントっていうのをいろいろ調べて、気になるところには直接行ってみようと。
で、そのひとつがモリブロで、毎年夏に開催されていて、2013年の開業の前に、一回それを見学に行ったんだよね、盛岡まで。その時はモリブロを見るのが目的だったから、そんなに街のこと詳しく見てなくて、改めて(開業してから)「てくり」っていうミニコミ誌を扱い始めて、盛岡のことをいろいろ見ていたら、非常におもしろい街なんだよね。おもしろいというのは、例えば民芸の流れが今もまだ生きていたり、城址跡を中心とした市街地の形成のされ方とか、そのあたりが面白そうな街だなと思ったのが一つと、あと実際松本で店を始めてみて、松本の街のことが少しずつ分かっていくときに、盛岡とリンクする点が多くて。今言ったように民芸があるとか、城下町だったこととか、駅降りて城址跡に向かうまでのアプローチの距離とか、街の規模とか結構近いんだよね。人口とかもそうなんだけど、川が流れていて、山に囲まれているとか地形的なことも。地形的に近いっていうのはたぶん文化的にも近いものも残っていて。実際民芸とかも残っているし。なんか、そう、店開けてしばらくした頃からもう一回盛岡は訪れてみたい街だなと思っていて。

去年の1月に盛岡に行けそうなチャンスがあったから、行ってきて。その時に「てくり」の印刷をずっと担当していた印刷会社の担当者さんが、印刷会社を退職してご自身で始めた雑貨屋さんが「ひめくり」っていうスペースを設けていて、ショップとギャラリーっていうのをやっているんだけど、生活道具とか生活雑貨とか、ギャラリースペースで展示をやったりとか。そこが「てくり」つながりでもあったので、そこにひとまず行ってみて、いろいろヒアリングをして、その中の一つにHolzさんの名前が挙がって行った。そこで、平山さんとも初めましてだったし、Holzのお店も初めて見てきて、入ったらいいわけですよ、店に置いてある物諸々が、とても良くて。で、あれ持ってこようか、馬ね。(菊地さん、Holzの雑貨で馬の置物を取りに行く)正式名称忘れちゃった、なんだっけ。これそのHolzで買ってきた馬なんだけど、その時にね。これあの、岩手の民芸品というか伝統工芸品で。

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ー 郷土玩具かな?

郷土玩具でしたっけ?豊作とか家内安全とかのお守り的なやつでしたよね。なんかこのここの部分(馬のしつらえ)が言ってみれば、今の僕ら世代でも好きなテイストじゃない。これが民芸品だと、もうちょっと民芸品チックな感じじゃない、ちょっとこうコテっとした。ここのしつらえの部分だけHolzのオリジナルのデザインになっていて、ボディは伝統的なものなんだけど。伝統的なものの一部の解釈を現代的に転換することによって今の暮らしにもなじませるというかたち、そういう趣向でオリジナルの商品を作っていて、それを販売することによって、実際これ僕がいいなと思って買って帰ってくるじゃないですか。そうすると松本に盛岡のものがこうやって現れて、こうやってなんかおぼろげになっちゃったけど、そういうストーリーとかも知れて、その盛岡の土地性とか風土みたいなものがここに含まれているわけなんだよね。そのやり方っていうのが、その当時から僕は松本土産っていう構想が自分のやりたいことの中の一つとしてあって。今僕がこうして好き好んで住んでいる街とか、エリアとか場所とかの良さ、なんで僕がこの土地を好きなんだろうとか、良さとか魅力みたいなものを、誰かに伝えたいとか、届けたいとなった時に、それこそ今の時代だったらブログを書けば良いし、ネットで何か発信すればいいのかもしれないんだけれども、もしくは僕は本屋をやっているので、本を作ればいいのかもしれないけれども、松本を紹介する。なんか、例えばネットのブログとかだったらスクロールされたらその後もう一回見ることはなかなかないし、本も購入してもらって、手元に置いてもらって読んでもらえるかも知れないけれども、二回三回って読む本とかって結構よっぽど好きな本だったり、それこそ仕事の参考にあるような本だったりじゃないとなかなか難しいけれども、例えば物とかだったら、こうやって置いたら基本的に何かなければ捨てない、気に入って買ったものなら。食べ物とかだったら、一時的なものだけれども、食べるっていう自分の体を通すことによって情報として入るだけではなくて、体験として入ってくるから、よりその土地のことを実感できるかなということが漠然としたイメージで思っていて。
その土地の魅力とか、まあ個性だね、といったものを詰め込んだ物。具体的に手に取れて、眺めることができて、購入して自宅に持って帰れる物に僕が感じているこの土地の魅力とか個性とかを詰めて、それを販売することによって、今僕が暮らしていない街の人にも僕が今暮らしているまちのことを知ってもらうということをやりたいなということは、まあもうそろそろ2年になってしまうんだけど、結構前から考えていたことなんですよね。他の地に旅行することがあったら、その先行事例というか参考のような事例をどっかで目にかけることがあったらいいなというようなこともあわせて考えてはいたけれど。

盛岡に行って、たまたま「いわてんど」のことを、「Holz」に言ったらチラシが置いてあって、過去に開催した「いわてんど」のフライヤーね。「これなんですか?」って聞いたら、こうこうこういうことをやっていてって言ってて、すごいいいなと思って。未だに僕がやりたいその松本土産のプロトタイプというかは、フォロー先はいわてんどなんだけど。っていうのは今言ったように、松本と岩手盛岡にいろんな共通点がある。街としていろんな近しいものを感じるし、(同じような取り組みとして、さつまものをやっている)ランドスケーププロダクトの場合、結構おおきな取引先もあるだろうし、それこそ都内でも大きく展開することができるようなちょっとモデルケースとしてはスケール感が今の僕には近くないなと思っていて。他の先行事例があるかなと思って探していたところで、たまたま出会えた「いわてんど」というのが僕の中ですごいヒットして。で、これはもう少し詳しく知りたいなというのはその当時から思っていた。その時点で僕もいつか松本で「いわてんど」をやってもらおうということはその時に思っていて、確かその時にもう伝えていた気がする。これいつか松本でやってほしいです、みたいな話を初対面の平山さんに向かってもう言っていた気がするんだけども。で、やるとしたら工芸の五月だなっていうのもあわせて考えていて、まあそれはさっきの話に戻るんだけれども、松本と盛岡の僕が感じている最大の共通点の一つに民芸運動の流れがあって、盛岡にはいま光原社っていうお店があるんだけど、そこが諸国民芸を扱っていて、そこがすごくかっこいいんだよね。

ー むちゃくちゃかっこいいよね。

むちゃくちゃかっこいい。制服とかねちょっとドキドキしちゃうよね。そことか松本には民芸館があって、ちきりやがあってとかそのあたりも含めて、工芸、民芸というキーワードでふたつの街を繋げることはできるなっていう行って実感として、手応えはあったし。いつか松本の「工芸の五月」に「Holz」と「てくり」の皆さんをお招きして、そのまあ、言ってもうちは本屋なので、切り口としては本ということで「てくり」があったほうがいいなとおもって、「てくり」と「いわてんど」みたいな企画展を「工芸の五月」でやりたいなという構想がそこで確立して、いつできるかなって思っていたら、去年の工芸の五月が終わって、6月に入って早々ぐらいのタイミングで、「てくり」の方から連絡があって、今回の「いわてんど」と合わせて、ホームスパンの展示、盛岡スヌードを展示販売するっていう企画につながっていった。

僕は平山さんに聞きたいことはたくさんあるんですけど、「『いわてんど』ってどうして始めたんですか?」とか、「どういう経緯でやっていらしたんですか?」とか「今後の展望はどうですか?」とか、そういった時間軸に沿った質問もそうだし、これを通じて岩手のことをみなさん知ってくださっていると思うんだけども、これきっかけで盛岡に来てくださった方とか、さらに言えば盛岡に定住や移住なさった方とかいるんですかみたいなことも聞いてみたいし。その質問事項ってたぶん、僕が聞いて僕の糧にするのももちろんいいけれども、僕がその先にやりたいことは僕自身の知識をつけたいというよりかは、その知識とか情報を使って、具体的に信州土産とか松本土産とかを作って、それを広めていきたいという先があるから、だったら知識とか情報を集める時点で、僕だけじゃなくて、その先にやりたいことを届けたい人たちも、一緒に話を聞いたら楽しいだろうなというふうに思って。それはコミット率というかコミットの濃度みたいなものが全然違うじゃないですか、「松本土産つくりました!どうぞ!」っていうのでそこで初めてみんなが知るよりも、「松本土産っていうものを作りたいと思っているんですよね、もやもや、、、いわてんどっていう素敵な先行事例があるのでそのことやっている人を招いて、とりあえずお話を聞いてみたいと思っているんですよね、もやもや、、、まだわからないけど、、、もやもや、、、」みたいなところから聞いてもらって、そういうことか、これで松本土産とかできるかなと言っている段階もそのプロセスも知っていただいて、できましたと言ったら、僕のもやもやというところを知ってくださっていた人たちは、多分松本土産ができましたという時に、「あ、あの時大変だったけど、できたんだね。」というふうに、コミットしてもらえるかなということもあって。だから、そういう意味で僕が平山さんに個人的にご飯でも食べながらお話を聞くのではなくて、公開インタビューみたいなかたちで、そういったことに興味がある方と一緒に平山さんのお話を聞けたらいいなということは工芸の五月の企画が決まった時にはイメージはしていて。

うちで不定期でバイトしてくれている信州大学の医学部の4年生がいるんだけど、彼は盛岡出身なんですよね。彼も、故郷に似ている松本はとすごい言うし。あとは、盛岡にも行ったことがある旅行者の方が松本に来ると、今まで行った旅先だと盛岡に似ていますねと言ったりとか。結構僕だけの感覚ではなくて、これは、松本と盛岡が似ているっていうのは。いろんな意味で似ている要素があると思うんで。だから平山さんとトークイベントまでの間に、もう一回改めて、どうして松本と盛岡に類似性を感じるのかということは(自分も)棚卸をしておいて、逆に平山さんにもお尋ねしたいと。「こういう観点から松本と盛岡は似ていると思うのですが、平山さんはどうですか?」とか聞いてみたいし。なんかその共通点はなんで生まれているものなんでしょうかね、とかその共通点があるからこそ、盛岡と松本でできることはなにかなとか、聞いていきたいな。企画タイトルの「『いわてんど』に学ぶ風土の届け方」というのはそのままなんだけど、結局その土地性とか土地の個性、場所性でもいいし、土地のキャラクターというのがあると思って、行ってみたら文化風土みたいなその土地の、その土地の雰囲気みたいなものを風土ということばに僕の場合は託したんだけれども。その土地の雰囲気みたいなものを、その土地に行く手前に知ることができる何かをその土地にいない人に届ける、という時に、どういったアプローチ方法があるのだろう、どういった手法があるだろうということの、一つの回答としての「いわてんど」という取り組みかなと、僕は今のところ見ていて、そういうことを当日聞けたらいいなと。

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ちなみに菊地さんは現在新店舗の準備中。なんと6月は一度店舗をクローズして全面リニューアルされます。今の栞日は5月中までとのことなので、お早めに。

聞き手/瀧内貫(まちの教室スタッフ)
サポート/杉田映理子(まちの教室スタッフ)
写真/古厩志帆(まちの教室スタッフ)

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菊地徹(栞日 sioribi)
1986年生まれ。静岡市出身。高校卒業後、進学のため、つくば市へ。大学卒業後、就職の関係で、松本市に移住。その後、転職のため、軽井沢町へ転居するが、1年後に松本に戻り、書店「栞日」開業。現在に至る。ブックフェス「ALPS BOOK CAMP」主催。
http://sioribi.jp
http://alpsbookcamp.jp