interview

インタビュー番外編/働きかたとイベントへの考え

授業を今週末28日に控え、先日掲載したインタビュー「いわてんどに学んで、松本土産をつくりたい」の番外編をお送りします。

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ー 授業企画の意図を聞いてきましたが、他にも聞きたいことがあって、ひとつは栞日の営業について、いつもいっぱいイベントとかギャラリー展示とかして、他の人よりたぶん精力的に動いている感じがしていて、そこへの思いや考えみたいなことと、あと、まちの教室からのオファーはいつもふたつ返事だと思うんですよね。一緒に何かをやるというのは既に3回目でしょ。大きなものとしては3つあってそれ以外でもいくつかということで、その理由をちょっと聞きたいなと。(まちの教室では)結局他のところでやっているのって自分たちではできないところを補うというスタンスがあって、例えば、若い人がスタッフとして入ってくれているところに魅力を感じていたりとか、あとは企画っていうところで自分たちが考えている企画をなんか少し延長というか、ステップアップさせてくれるようなニュアンスだったりとか。だけど栞日とか、特に松本近辺の人たちとかって、自分たちでもできるわけじゃん。わざわざ一緒にやる必要はない。でもなんか、一緒にやることに対してどう思っているのかなというのが聞けるといいかなと。

えっと、まず第一点。栞日がおそらく、ほかと比べて精力的にという”ほか”というのはこの規模でなにか事業をやっているという”ほか”というイメージですよね、多分ね?

ー うん。あと、松本の他のやっている人たち、かな。

うーん、、、まとめようとすると多分2つ理由があって、ひとつはもうどうでもいい理由なんだけれど、多分僕の性分。単純に僕の性格。

ー どっちかっていうと他が遅いって話?

いやいやいや、そういうこと言っているつもりではなくて!(笑)僕が単純にいろんなことにガツガツしている性分。やりたいことがたくさんありすぎる。あれもやりたいし、これもやりたいし、それもやりたいっていう。それで、やりたいけどやれないていうのがすごい嫌だ。やりたいならやろうっていう単純に。それだけ。もちろん自分の体は一つだし、時間は1日24時間だけども、その中で工夫して、もちろん一緒にやる人に迷惑かけたらいけないけれども、本末転倒だから、そこのバランスの結構ギリギリのところまでは自分は挑戦したいと思っていて。自分っていうひとりの人間ができる最大限のいろんなことはやれる限りやりたいっていう、思っちゃうみたいな性格で、その性格はなんでみたいな話をされると、なんか僕の人生論にみたいな話になっちゃうから、若干面倒くさいから省くけど。ほぼ生まれ備わった性格だと、今は諦めているんですけど。それがまあ一つの理由かな。

もうひとつの理由としては、意識的な部分、意図的に企画を多発していることに関して言うと、それは僕が松本でやるお店を本屋っていう業態を選んだからだと思う。他の業態、業種を選んでいたら自分のお店のコンテンツとして、多分ここまではやっていないと思っていて、店の外でのイベントとかも含めて。
本屋っていうのはその街において場所自体がメディアになれる場所だと思っていて、これは結構特殊なことで。その具体的に本屋っていう空間がリアルにあって、本屋っていう箱があって、そこで手にとって、手元に置いておきたいと思った情報を購入して、自宅なり携えて手元に置いておくことができる。情報が集積されている場所が、まちの中にあるっていう状況が、僕は豊かな暮らしのひとつの要素だなと思っていて。だからこそ、いい本屋がある街はいい街だと思うし。いい本屋がある街に暮らしたいなというのがひとつ自分の考えとしてはあって。僕が考えるいい本屋っていうのは、情報に多様性があること。今言ったのは街全体で見たときにその街に点在している本屋さんたちが補填しあって、いろんな情報がある状態を街に作っていることが、街の本屋として、いい本屋群、いい本屋が揃っている街なのかなと思って。その点において松本で僕がリトルプレスの本屋をやろうと思ったのは、松本でリトルプレスという媒体に触れられる場所がなくて、でもなんか多分この街はいろんな文化的な素地が育っている街だから、しかも県外からクリエイティブな人たちが集まっていて、これからまだまだその伸びしろがあるようには感じていたし、そういう意味ではその手の人たちが都内だったらあの手の本に触れられるのに、地方ではあの手の本がないから難しいよねみたいなことを言っているのは非常にもったいないなと思っていて、そういう意味ではその松本という地方都市において多種多様な本に触れられる環境を整えるっていうことはなんかその、県外者の移住を促進するうえでのひとつの下準備になるんじゃないのかなという考えもあって、それでこういうインディペンデントの本を中心に集めた本を集めた本屋を開こうと思ったんだよね。
で、話をそのイベントの方にまた戻すんだけれども、結局その多様な情報に触れられる場所、メディアとしての本屋を考えた時に、僕はイベントも情報のひとつだと考えていて、うちは個人の制作物である本を街に紹介するために開いている場所だから、同じ感覚、つまり個人の表現とか、考えとかを、人に開くための企画展だったりイベントに関しては、可能な限り開催していきたい。そうなってくると、せっかくこんなスペースがあって、3フロアあって、3フロアとも本で埋めるのは経済的にも実力的にもまだ難しいから、空いている1フロアをギャラリーにして、いろんな企画展をやっていただいて、基本的にうちのギャラリー利用としては、この街でなにか趣味的にやっている人たちに表現の場を持ってもらうことはいまもう卒業したいと思っていて、それは他にもやれる場所がいくつもあるから、この街には。どちらかというと、この街でまだ見たことがないような人とか、触れたことがないような作品とかにこの街の人に触れてもらって刺激を受けてもらったりとか、この街に今いるクリエイターの人たちが、この人の作品見てみたかったんだよね松本でも、というような人たちを呼んでくるのが中心かなというふうに思っていて。それは会期がない一日だけのイベントに関しても今は同じ様に考えていて、なるべくこの街の人たちにとって新鮮で刺激があってっていう人となにかやるということをやりたいなと思っている。だから、トークイベントのゲストにしてもそうだし、音楽のライブとかもそうかな。

いわゆる行政とかが展開している、移住定住促進、地域をおこすとかって話の時に僕がなんか違うなと思うのは、例えば、来年度、何人の移住者を増やしましょうという話をする。目指せ何万人都市みたいな話とか。え?じゃあ誰でもいいのプラス何人は?という話が僕の中ではあって。僕は100人来るんだったらおもしろい1人が来た方がおもしろいと思っていて、100人がどうでもいい人ってわけじゃないんだけど、とりあえず100人が増えたっていう状況より、都内とか他の地方ですごく影響力があって、すごく魅力的な人が松本に引っ越してきて、そこでなにやり始めましたっていうと、その周りのフォロワーの人たちが、あの人松本行った!みたいな話になるわけじゃないですか。そこで惹きつけられてやってきたプラス10人の方が、なんとなく松本が好きで移住してきた100人よりもその後の松本に対する影響が大きいと思って。僕はこの街でこの店を開いていることによって、その影響力のある1人なりそのフォロワーの10人なりが松本に振り向いてくれるためにやれることをやりたいと思っていて、そのためには1000本ノックじゃないけども、とりあえず数を打つことを無視はしてなくて。筋トレみたいなものですよね。イベントを繰り返す、反復することによって、僕自身もイベント運営の勘どころみたいなものが掴めてくるし、こういう人呼びたかったら、こういうことに注意しなきゃいけないとか、もちろん失敗もいっぱいするし、もっとこうできたらよかったなみたいなことばっかりだけど、それは情報を発信し続けるという意味において、むしろ絶え間なく途切れなくやっていくということだなというふうに。とはいえ、僕はバランスはあるとおもっていますよ。毎日イベントやりたいとは思っていないですよ。目標としては、月1か隔月くらいには著者を招いたイベントは本屋としてやっていきたいな、地方でも著者イベントってできるんだよって。乱発しているつもりはないですけどね、多発している認識はあるけど、乱発はしてはいけないと思っていて。一つ一つのイベントに対して僕自身もちゃんとやったという実感を伴う、、、

まちの教室に積極的にコミットしたいと思っているのは、いくつも理由はあるし、すごい個人的な理由を先に言ってしまうと一緒になにかやるのはとても楽しい。あとは、自分自身の興味関心の幅を少しひろげてくれるというか、ずらしてくれるというか、ずらしてくれるというところに知的好奇心が刺激されるというか、そこにおもしろさを感じるところが、個人的な理由としてあって。僕自身も自分の世界観だけでALPS BOOK CAMPとか諸々のことをやっていると、自分が想定範囲内からどれだけイマジネーションを膨らませてもその一歩先とか半歩先くらいにしか抜けることができない。まちの教室に限った話ではないけれども、意図的になにか、企画っていう段階で他の人となにかやるというのは、僕自身の感性を鈍らせないためというか常にアップデートさせていくためにも必要だと思っていて、そういう意味でもこういう企画に声をかけていただけて、一緒にやれて、基本的に前回も今回も僕が授業コーディネーターという立ち位置なので僕自身が呼びたい人を呼んで、聞きたい人に聞いているからそういう意味では僕の意図の範囲内ではあるかもしれないけど、こうやってインタビューを受けて自分の考えを整理して話せるとかそこらへんは自分一人で企画をやるときには挟まれないプロセスであったりはするかな。そこらへんは新鮮でありがたい。自分自身の棚卸をするという意味合いにおいてもこの企画に参加するということはいいかなというふうに。

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ー 年1回くらいがちょうどいいかもね。

うん、楽しいですね。あとはまちの教室の特性のひとつとして、色んな街でやっているじゃないですか。複数開催地を持っていて、僕がまちの教室に魅力を感じている考え方が、それぞれの土地にそれぞれの段階というかフェーズがあって、いまそれぞれのフェーズの中で、その土地が抱えている課題、問題は別々なはずで、その課題を建設的な方向へ抜けていくために、いまこの街に必要な学びはなんだろうという観点からイベントをしていくでしょ、トークにせよ、体を動かすワークショップにせよ。それは、僕が興味があることの一つで。長野県ってすごく大きいから、且つ山国だから、それぞれの街が山で分断されていて、というか山を避けられるところに街が形成されていてという感じで、やっぱその物理的に隔離されているから、それぞれの街で基本的には完結されてた文化が育っていて。それがすごく昔から、近代現代までつづいていて、今に至っていて。その過程の中で、それぞれの街がそれぞれの発展のしかたとか、壁へのぶつかり方をしてきて、それは例えば物理的もしくは交通網的距離感によって、あの街はあの時代に東京にアクセスできたからこう変わったけど、この街は東京にアクセスできなかったから、未だにこうとか。
あとはよく言うけど、街道ね。江戸の話まで戻せば、街道筋とか宿場町とか、あの観点もすごい興味深いし。長野っていうスケールで考えたときに、それぞれの街の現在地みたいなものを知る一つの切り口として、まちの教室がいま何をやっているかっていうのをフォローしておくっていうのは僕にとっては自分自身の興味関心への一つの回答として面白いことだと思っていて。そのひとつの松本の街の現在地を知る授業に自分自身が関われるのは非常に刺激的。
僕はいま松本の街にとって必要なことは、すごく一言でまとめてしまうと、「この街このままだと危ないよ」ということをたくさんの人が認識することだと思っていて。松本はすごいいろんな文化的な要素もあるし、国宝松本城があってそれがいま世界遺産登録を目指していて、山雅があってスポーツ文化としてもすごく成熟しつつあって、いろんな人から注目されていて、クラフトフェアがあって年に1回はいろんな雑誌が松本特集を組んでくれて、「安泰!」みたいな感じになっているけれども、じゃあカフラスがなくなって、東京資本の大型商業施設ができて、あっちこっちのすごい大正昭和のすごくいい建物が取り壊されて、普通に月極の駐車場とかコインパーキングになっていて。チェーン店がロードサイドに並び始めていて、5年後に今の松本はあるんですかという話になったら、もしかしたらベッドタウンとして以前は栄えたけれども今はドーナツ化が進んで、シャッターが下りていますみたいな北関東にありがちな風景が松本の市街地にだって広がる可能性はあるし。これまでと今の松本だけ見れば安定かもしれないけど、この2〜3年、もしくは4〜5年松本で進行しているちょっとした歪みみたいな予兆みたいなものを丁寧に集めていくと、むしろネガティブな将来しか今の松本には想像できなくて。ってなった時に、もっと効果的に松本の街の魅力とか、魅力じゃないかもしれないね、松本の街のことをもっと効果的に伝えるべき人に伝えていって、あの街このままつまらない街にしてしまうのはもったいないよねって思ってくれる人やもっと松本でおもしろいことをやってくれる人が必要で。ってなった時に僕がアプローチとして必要だなと思うのが、100人人口をふやすことではなくて、ひとりのものすごいインフルエンサー(※ここでは、世間に大きな影響力をもつ人の意味)と、そのフォロワー10人を松本に招くことだと思っていて。今この街にいる人とか、この街で生まれ育った人が危機感を持つことはもちろん必要なんだけれども、やっぱりインパクトとしてなにか大きなことを残せるのは、外からの力の方が、外圧の方が大きいと思うから、僕の考えとして。そう考えたときに、今の松本にとっての学びというのは、松本をどのように発信して、松本の文化・風土をどう効果的に発信して、最近僕はクリエイティブな人という言葉の使い方をしてしまうんだけど、なにかおこしてくれる人っていうのは創造的な人じゃないといけないからクリエイターっていう言葉になってしまうんだけど、なにかおもしろいことが出来る人に松本に振り向いてもらって、来てもらって、感じてもらって、暮らしてもらって、ここでなにかやってもらうってことなんじゃないかなっていう。それを効果的に伝えられるお誂え向きのフォーマットとしてまちの教室があるんじゃないかなと思っています。

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聞き手/瀧内貫(まちの教室スタッフ)
サポート/杉田映理子(まちの教室スタッフ)
写真/古厩志帆(まちの教室スタッフ)

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菊地徹(栞日 sioribi)
1986年生まれ。静岡市出身。高校卒業後、進学のため、つくば市へ。大学卒業後、就職の関係で、松本市に移住。その後、転職のため、軽井沢町へ転居するが、1年後に松本に戻り、書店「栞日」開業。現在に至る。ブックフェス「ALPS BOOK CAMP」主催。
http://sioribi.jp
http://alpsbookcamp.jp