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これからの「写真」の向かう先

4月にしては汗ばむような快晴の中、フォトグラファーの濱田さんを講師としてお招きして「濱田英明さんに聞く「写真」の現在地」が行われました。イベント情報のリリースから開催まで日が少なかったにも関わらず40名以上のお客様にご参加いただきました。授業が始まると皆さん濱田さんの言葉とプロジェクタから映し出されたお仕事の数々を真剣な表情で聴き入っていました。

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授業コーディネーターの瀧内が濱田さんと最初にお会いしたのは、濱田さんがフォトグラファーと名乗る前のこと。当時、瀧内が企画した長野市でのイベントでデザイナーとして、展示設営をしていたのだそうです。その時は、濱田さん自身でもフォトグラファーに転身するとは考えもしなかったと話します。

まわりからの評価が、背中を押した

写真を撮り始めたのは、お子さんが産まれたことがきっかけと話す濱田さん。成長の記録として写真を撮り始め、インターネットで公開していたところ、海外からの反響が多く、想像以上に自分の写真が世界に拡がり驚いたと当時を振り返ります。インターネットというフィールドでは、良くも悪くも勝手に拡がっていくもの。こうした拡がりを許容していけるかどうかがとても大切だという濱田さんの言葉が印象的で、中には無断で使用されているケースもあったという話しも挙がりました。

そうしたインターネットでの反響は更に拡がり、台湾にて初めての写真展開催へと繋がります。ここでも、自分の想像以上に展覧会の規模が大きく、大きく引き伸ばされた自分の写真や、その前で記念撮影をしているたくさんのお客さんの姿を見て、多くの感謝と共に、写真に対して「趣味」だと捉えていた考えにも変化が現れたと話します。

海外での写真展開催が1年の間に4回。海を越えた海外からの評価が後押しとなり、フォトグラファーとしての活動がスタート。海外での活躍から、濱田さんの仕事を見た日本のクライアントからもオファーが来るようになり、正に逆輸入的な仕事の拡がりへと繋がっていきます。

写真を撮ることへの想い

フォトグラファーとしての仕事は多岐に渡ります。スクリーンに映し出しながら、雑誌の表紙、広告、変わったものだと台湾時期総統のFacebookのヘッダー写真など、様々なものを見せていただきました。建築以外は全て撮っていて、専門性がないからこそ、様々なジャンルにチャレンジ出来るのだと濱田さんは話します。

そんな濱田さんが写真の撮影時に大切にしていることとはなんでしょう。

感覚的にはアマチュア側と近くて、最初は特に何も気にせず撮影していた。写真を公開し、反響が大きくなる中で、自分自身の気づきと、見てくれている方からの気づきがミックスされていく感覚があったと話します。写真で大事にしていることは、見ている人が入り込める「スキマ」を残すこと。スキマとは、共通の記憶であり感情的な部分。例えば、写っているのは子どもであるけれど、自分の子どもを思い出すとか、親のことを思い出すとか、昔を思い出すとか。見ている人と何らかの記憶と重なっていく。こうした、日常でよくある場面の瞬間を集めることが、写真が長生きするのかもしれない。そういった気づきから、この部分を研ぎ澄ませていくことを意識したのだといいます。写真を見て、同じ感覚を持ったたくさんの人と共有していきたいと。

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これからの「写真」の向かう先

写真とは、その人しか切り取れない視点であり、ファインダー越しにも被写体との距離が映るものだと話す濱田さん。誰でも手軽で簡単にキレイな写真が撮れる時代となり、写真に対しての世間の意識もハードルが下がる中、被写体または対象との距離感が大切。それは、コミュニケーションの中で築かれる関係 性がであり、物理的な距離でもある。濱田さんのカメラレンズは、肉眼と近いものを使用していて、近づいて見える写真は実際に近づき、遠く見える写真は 実際に距離を取って下がっているそう。こうした距離感が先に書いた「スキマを残す」ことにも繋がっているのかもしれません。

濱田さんが写真について話す中で特に興味深かったのが時間軸としての捉え方。写真は撮る瞬間が「今」で、撮った瞬間に「過去」になり、撮った写真を見るのは「未来」となる。その時々の時間軸を行ったり来たり出来るメディアは写真だけではないかと話します。言語を越えて、気軽に世界への発信し、評価が得られる時代だからこそ、 写り込む自身の感情や距離感、関係性に意図や自分だけの視点を写真に込めることが、フォトグラファーとして生き延びるための向かうべき方向なのかもしれません。

授業の後半では、濱田さんも立ちながらお話しいただくなど、参加者からの質問も多く、会場も盛り上がりました。濱田さん、ご参加いただきました皆さま、ありがとうございました。

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(まちの教室スタッフ 小野朋浩)

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濱田英明(写真家)
写真家。1977年、兵庫県淡路島生まれ。大阪在住。2012年9月、35歳でデザイナーからフリーのフォトグラファーに転身。2012年12月、写真集『Haru and Mina』を台湾で出版。『KINFOLK』(アメリカ)、『FRAME』(オランダ)や『THE BIG ISSUE TAIWAN』(台湾)などの海外雑誌ほか、国内でも雑誌、広告など幅広く活動中。2014年10月写真集「ハルとミナ」(Libro Arte刊)を出版。
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