report

いま みる 下諏訪

「熱意だと思う」「借りたあかつきにはそこを大事にする」
空き家を貸してもらえるコツについて受講者の方から質疑にそう答えたのは、講師の東野唯史さん。
授業の始めは、コーディネーターであるマスヤゲストハウスオーナー斉藤希生子さんとマスヤゲストハウスを作っていった様子や東野さんがされているお仕事の内容などについてお話を伺えました。その中で、「おばあちゃんになってマスヤが出来なくなっても下諏訪、地元で暮らしていきたい」「止めないと頑張り過ぎてしまう」などの部分を東野さんが斉藤さんから感じた熱意もマスヤゲストハウスが下諏訪にできる事に繋がっていったのだと感じました。

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デザイナーでもある東野さんは、奥様の華南子さんとMedicalaという空間ユニットをされています。空間づくりする現場となる地方都市にその期間中、住みながら施工していきます。 山口県の萩市では4ヶ月住みながらゲストハウス、美容院の依頼では2ヶ月滞在。住んでいるうちにその土地の人々とも顔なじみになり、違う現場に行った後・離れた後も「その人たちに合いたくなる」そう。

斉藤さんは、学生時代、海外を旅行していた時にゲストハウスに利用し、いつか自分も開きたいと思いがありました。東京のゲストハウスで働いていた時に地方を回り、開業はたくさん人が来る場所でと思っていたが、地方を回っているうちに日本中に好きな場所が増えたそうで、自分の所、地元はどうか? 地元だとなかなかそういう魅力に出会えないと始めは思っていた。選択がないと。外に出てから(そういった魅力を感じにくくなってしまって)地元に戻れない人がいるのかなと思った時に「わたしが諏訪を楽しくするぞ!」地元で「やるぞー!」と気持ちになったそう。
レポートを書かせていただいている私自身も地元出身なのですが、その思いでゲストハウスを開業する事・それをきっかけに周りも変化していくのではないか、私自身も何か地元の事をもっと知ったり、おもしろい事に関わっていけたらといいなと思い、斉藤さんに出会えた事がとても嬉しくなりました。その日の事をおふたりのお話を聞きながら思い出していました。

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「いい空間ができればそこに人が集まって流れが生まれる」そんな思いから依頼者と空間をつくっていくMedicala。
マスヤにはカウンターバーがあるのですが、それは斉藤さんがマスヤを作る時に出した「根っこが生えちゃうような」居心地の良さというイメージを東野さんが形にした物。
東野さんがデザインされた東京都のNui.や山口県萩rucoというゲストハウスでは、高さのあるイスを使っているそうですが、マスヤではゆっくりしてもらえるよう普通の高さのイスを使用しているそう。バーカウンターに立つスタッフ側の目線が下げ、お客さんとの目線がちょうどいい高さになっていて、2〜3時間話していられるような空間の重心を低くしている。また、「明るい」というイメージからは、吹き抜けをつくった事でロビーが明るくなったそう。マスヤ旅館だった時にもう1つよい部屋があったそうですが、斉藤さんは光を取り込みたかった。宿としては部屋を1つ潰してしまったら売り上げが減ってしまうが、少しでもお客さんに心地良く過ごしてもらいたいという斉藤さんの思いから現在のロビーの明るい吹き抜けがあるそうです。
私も少しおじゃました際にバーのイスに座って過ごしていましたが、時間が経つのを忘れていました。ロビーでごろんとしたりストレッチしている人がいるそうで、今度はロビーでごろごろしたいな〜なんて密かに思っています。
お風呂で使われていた照明や解体した時の土壁など解体したものもマスヤの中に積極的に使われています。マスヤは元々マスヤ旅館という場所で大家さんと中を大掃除したり、現在女子ドミトリーになっている場所にかっこいい装飾があり、「継ぎたいと思った」。「前の香りが残っている」という裏コンセプトでつくっていたいい場所だったそうです。自分達が新たに作るだけでなく、残していく事も大切にされています。床の断熱の事やロビーの中に1本大きく煙突が通っているペチカストーブの事もこの授業でお話を伺えて知りました。是非、授業を受けた方冬場も訪れてみて下さいね。

授業後半は、現在東野さんが下諏訪で実際にお借りしている物件についてスライド上の図面を見ながら、その物件を元に実際に使うとしたらどう活用していくのか・下諏訪にどういう人の流れをつくればよいか、グループに分かれてセッションをしてみました。
3分間の考える時間が設定されましたが、参加者のみなさんの意見が白熱して、セッションはさらに6分程時間が延長。

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それぞれのグループから自転車用の宿泊施設、昼間は2階の畳が利用出来るお茶処・夜はキャッシュオンのバル、マスヤ2号店 利用者が個人で泊まれるような場所。湯治客を取り込んでなどの意見が出されました。その後、東野さんが考えている案を教えていただきました。東野さんが今の下諏訪を見た時に、下諏訪に足りないと考えているのは、月1回は必ず行きたくなるようなお店。さらに、夜遅くまでやっているお店。静かで読書や仕事ができるお店。その条件を満たせるかたちにした時に考えたのは 「ブックカフェ ヨルヨミ(仮)」15時〜24時open ひとりでゆっくり長時間できる読書や仕事ができたり、雑貨を売ってるスペースがある。free Wi–Fiが使える。月定額で利用できる。温泉付きチケットコーヒー券があったいいな。カレー サンドイッチなどの軽食も摂れ、イベントも行っていくなど まさにあるといいなが詰まっている。それを聞いて自分の頭の中で考えるだけで楽しくなって、私はもうそこに出掛けた気分になっていました。

マスヤゲストハウスが開業してこの夏で1年が過ぎた下諏訪。ゲストとして訪れた人同士が結婚する事となり再びマスヤを訪れたり、下諏訪へ移住してきた人、一緒にイベントを企画することになった人もいるそうです。地元出身である、まちの教室スタッフ小口が開業した「&(アンド)」なども近くでOPENしたりと、マスヤやMedicala、その周囲へと新しい下諏訪への変化にも波及しています。今回グループセッションの中でもおもしろい意見が出ていましたが、下諏訪だからできる何かがまだまだ隠れているのではないかと感じます。今後も下諏訪から目が離せませんね!

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(まちの教室スタッフ 宮坂詩織)

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東野唯史(空間デザインユニットmedicala代表)
1984年生まれ。名古屋市立大学芸術工学部卒業。東京のデザイン会社に勤務後、2010年よりバックパッカーとして約1年間の世界一周。帰国後、2011年よりフリーランスのデザイナーとして活動。
現在は「いい空間」をつくるために、全国各地仮住まいをしながら空間づくりをしている。代表作に東京・蔵前のNui.、山口県萩市のruco、長野県下諏訪町のマスヤゲストハウスなど。
http://medicala-design.com/