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本のある場所は、知るわくわくがある

今回のまちの教室はALPS BOOK CAMP内での開催!
木崎湖に全国から面白い本屋さんが集まるこのイベントで、図書館長と本について考えます。

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講師は県立長野図書館の館長を務める平賀研也さん。情報と情報、情報と人、人と人をつなげることを意識しながら図書館の在り方がどう変わるかを考えています。

その平賀さんと「図書館」というキーワードに惹かれて図書館員の方が4名、書店を営む方が1名参加してくださいました。

私の読書体験は自称「本の虫」の両親から始まります。毎週1回以上は本屋さんに行くし、服やおもちゃは買い渋るのに本なら何でも買ってくれました。
小学校の時はそれにプラスして学校の図書室と市の図書館に行って毎週上限一杯本を借りて読む生活…。あぁ今考えるとなんて(本に)裕福な生活だったんだ!
それに比べて大学生の今は、めっきり本から離れた生活になってきています。

それでもALPS BOOK CAMPだったり、松本の「栞日」のような本屋さんだったり、「本」のある場所にとても魅力を感じてしまいます。
「本」にはどのような魔法がつまっているのでしょうか?

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ALPS BOOK CAMPに集まるような本屋さんと図書館は何が違うのか?を確かめるために、様々なジャンルにまたがる本を図書館員さん4人で並べ替えをしてみます。
図書館の本の並び方は「日本十進分類法(NDC)」に従って並んでいます。
ジャンルに対して0〜9の数字が対応していて、0は総記、1は哲学、2は歴史…となっているもので、図書館に一番多いものは9の読み物だそう。一番借りられるのも9の読み物とのこと。

この並べ替えを見ているのが楽しい!
例えば「シネマで生物学」(若原正己 著)という本は、「映画」についての本とすれば7の美術になりますが、「生物学」の本とすれば4の自然科学になります。
これは入荷情報である程度分けられますが、判断するのは図書館員さんなんだそう!
一番自由度が高いのは0の総記。この中に「雑書」という本が含まれるんですが、実はよくわからなくて分けられなかった「図書館員の悩みや揺らぎ」が詰まっている分野なんです。
図書館の棚を見ながら「あ、これはこう捉えたんだな」とか「これは私的にはこの分野かな〜」とか考えるのも一つの楽しみ方ですね。

このように、図書館の本棚は決まりに沿って並べられています。では本屋さんはどうでしょうか?
大型の書店になると図書館のようにジャンルをしっかり分けて並べているところもありますが、まちの本屋さんや古本屋さんを想像してみたら、うーんなにか決まりがあるのか…?

試しにきれいに十進分類法で並んだ本から数冊好きに選んで並べてみます。
「どうでしょう?装丁が似たような感じだったり、なにか想いや考えがあってこの並びなんじゃないか、と思いません?」と、平賀さん。

平賀さんは「図書館は『なんでもあるのに、なんにもないよね』と言われる。情報はいっぱいあるのに来てくれた人がアクセスしにくい、自分の欲しいものが見えにくい環境にある」と言います。
これは先ほどの十進分類法は情報に行きつくためにわかりやすく並んでいるはずなのに、そうではないということ。

それに対して書店の人が選んだ本の並びや本棚、または他人の本棚って、なぜかドキドキする…。
平賀さんは「他人の本棚を見るとその人の興味がいつの時代に、どこから来たのかが分かる」と言います。
先ほど数冊選んで並べてみたのと同じように、私たちは「その人の思いや本に共通した何かがあるのではないか?!」と想像しながら本棚を見てしまっているようなのです。
図書館と違い、本屋さんでそういう妄想を抱いてしまうのは本屋さんごとに本の並びが違うから。
本屋さんが隣り合わせた本の並びに意味を持たせ、何か伝えたい感じをひっそり受け取ってしまっているのです。むむむ、現代のテレパシー?

この本屋さんのドキドキする感じを図書館に入れ込みたいというのが平賀さんの考える新しい図書館の姿の一つ。
「本はだれかに世代を超えて何かを伝えるもので、ALPS BOOK CAMPはみんなに何かを見せたいところ。ここにいる書店の人たちがどんどん図書館に入ってきて『自分たちに選ばせろ!』ってしてくれると起爆剤になる。」
実際に塩尻のえんぱーくなどは十進分類法ではなく来館者に見やすいように開架しはじめているところもあります。
図書館の中にある人セレクトの本が並ぶ……確かに先ほどの実験のようにドキドキする棚が出来上がります。

「でも、僕は図書館にお店が入っていくことに違和感があります」と授業コーディネーターの瀧内さん。
お店でできることはお店でやればいい、図書館には図書館自身の良さを出していった方がいいのでは?との提案です。

図書館の魅力は「人類が積み上げてきた知識と人との出会いの場」であることと平賀さんは答えます。
十進分類法の分類と大学などの学部には相似性があり、勉強していることに対してそれぞれの分類が対応するようになっています。
だけど分類に分けることに悩んだように、現実は分類のように分けることができません。生徒はだんだん学校の勉強に対する疑問が積み重なっていくようになります。
それでも、現代でも「知は力」であるし、バックグラウンドにどのような知識を持つかでどのように生きるかが変わってくる。
そこで固定概念が揺らぐような一撃を自分自身に食らわしてほしい、図書館はそういう場であってほしいというのです。

そこで二人の間に出た言葉が、「想いを受け取ってほしい本屋さんは書き手に近く、人類の知の蓄積である図書館は受け取り手側に近い」!だんだん面白い話になってきました。
その本屋さん側と図書館側を近づけることは本当に人を「知るドキドキ」に近づけていくのか!?

議論は2時間の授業だけでは足りません!(でした!)

「書店には店主に会いに行く」と授業コーディネーターの瀧内さんはいいます。参加してくださった図書館員さんも「図書館で私に会いに来てくれるようになってほしい」といいます。
人と人をつなぐためにある本、本をつなぐためにいる人…。
民官超えて、「公共」や人と人をつなぐことを考えていかなければいけなくなった今、図書館はより人をつなぐ可能性のある場所、より「公共」のある場所になっていく可能性があります。
そのためには「行政が何かやってくれる」ではなく、「やりたい人がやりたいようにできる」のが一番と平賀さん。
図書館でなにかやってみたい人はぜひ、平賀さんまでご連絡を!

ちょっと「図書館でどうやったら遊べるか?」を妄想してみませんか?

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(まちの教室スタッフ 越智風花)

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平賀研也(県立長野図書館館長)
1959年仙台生まれ東京育ち。法務・経営企画マネージャーとして企業に勤務。その間、米国イリノイ州にくらし、経営学を学ぶ。2001年伊那に移住。公共政策シンクタンクの研究広報誌編集主幹を経て、2007年4月より伊那市立伊那図書館長。2015年4月より現職。実感ある知の獲得と世界の再発見、情報リテラシー向上に寄り添える地域情報のハブとしての図書館を目指す。